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一般社団法人 HPCIコンソーシアム
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提言「次世代計算基盤を利用した成果の最大化に向けて」

堀 高峰

堀 高峰

国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門 地震津波予測研究開発センター

HPCIコンソーシアムでは、我が国の計算科学技術振興の中心となり、世界最高水準の成果創出と成果の社会還元を目指して活動することを理念としており、その実現に向けて、計算科学技術に関わるコミュニティの幅広い意見を集約し、国への提言を行なってきました。今回の提言は、HPCIシステムの今後の運営の在り方に関する調査検討ワーキング・グループ(以下、WG)において、将来、次世代計算基盤を利用することになるユーザ、ならびにシステム構成機関としての立場として、成果を最大化するために、どのようなことが次期フラッグシップを含む次世代計算基盤の整備・運用の上で求められるかについての議論にもとづいた提言をまとめたものです。議論にあたって、「次世代計算基盤に係る調査研究」の研究代表の方々や「富岳」開発関係の方々、WG委員等へのヒアリング、HPCIのユーザやHPCIシステム構成機関との意見交換会も行いました。
 提言の概要としては、次世代計算基盤の利用成果の最大化へのポイントは、従来のHPCIの殻を破り、AI・データサイエンスとの融合や量子コンピューティングとの連携を実現し、様々な応用分野や産業利用でユーザを拡大することであり、そのために以下が不可欠であるとしています。

(1)様々な観点での使いやすさ(ユーザビリティ)の向上

従来のHPCユーザ以外に向けたユーザビリティ向上としては、「富岳」やシステム構成機関で進められているユーザビリティ向上のための実証試験的な取組、すなわち、データ活用社会創成プラットフォームmdxでの仮想化基盤の構築や「富岳」のクラウド利用などの継続・強化。継続・強化する取組での試行機会を提供することで、AI・データサイエンスや量子コンピュータ関連、産業利用を含めた様々な応用分野でどのようなニーズがあるかを引き出し、次期フラグシップ・システムの開発に順次反映していくこと。
 従来からのHPCユーザ向けのユーザビリティ向上としては、HPCI関係で開発されたアプリケーション、商用アプリケーション、OSSなどの移植性や継続性が重要であること。また、アプリケーション開発者にとってのユーザビリティ向上にはコデザインの充実が必要であること。次期フラッグシップ・システムのみでこれら全てを賄える訳ではないので、第二階層の多様性も重要であることやフラグシップ・システムの端境期解消への期待。

(2)次期フラッグシップ・システムは、使いやすさに加えて、それでしか実現できないことを担うこと

使いやすさだけであれば商用クラウドがAI・データサイエンス等で先行していることから、次期フラッグシップ・システムでしかできないこととして、これまでのHPCとAI・データサイエンスの両方での世界トップクラスの実効性能の実現の必要性。そのためのデータ移動重視ハードウェアの重要性。また、「富岳」での経験や演算加速機構の必要性を踏まえた、幅広くオープンに様々な分野のアプリケーションを対象とした概念設計段階からのコデザインの重要性。演算性能、メモリ性能等の各ハードウェア特性のトレードオフや、様々な特性をもつアプリケーションに対する性能の出し易さ・出しにくさとの関係の網羅的な検討と情報共有の必要性。詳細設計でのアーキテクチャ取捨選択後の早期情報開示やアプリケーション性能向上指針提供の必要性。

(3)上記の開発や利用を担う若手の育成とキャリアパスを見据えた長期的視点

次期フラッグシップ「開発期」における様々な開発のための人材の育成と、「運用期」におけるそれらの人材のキャリアパスを最初から見据えることの必要性。これまではフラッグシップ・システム開発にとってのいわば「端境期」であったが、今後は次期フラッグシップ・システムに向けた「開発期」に入る。次期フラッグシップ開発プロジェクトの中で(1)や(2)を実現するための課題設定と、人材育成のための予算配分が不可欠。開発プロジェクトの中で若手の人材育成をどのように進めるのが効果的か、将来の運用期において、育成された人材のキャリアアップをどのように実現するかが喫緊の課題。キャリア形成の好例としての計算物質科学人材育成コンソーシアム (PCoMS)の事例紹介。分野振興として、従来の計算科学分野だけでなく、AI・データサイエンスや量子コンピュータ関係、大規模実験・観測分野、 IoTを活用する応用分野や産業界等、幅広い分野を対象とすることの必要性。
 以上が提言の概要となりますが、この中でHPCIコンソーシアムをどう広げていくか、すなわち、AI・データサイエンスや量子関係で進んでいるHPC関係の人たちの参加などをどう進めていくか?また、分野振興と人材育成における継続性と分野拡大のバランスをどうとるか?といったことについては、昨年度までのWG等では十分検討できなかった課題であり、引き続き検討が必要と考えています。

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堀 高峰
国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門 地震津波予測研究開発センター
HPCIシステムの今後の運営の在り方に関する調査検討WG主査