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計算科学ロードマップ2023の発行にあたり

藤堂 眞治

藤堂 眞治

東京大学大学院理学系研究科

スーパーコンピュータは現代の科学技術の発展に不可欠であり、知識の獲得や新たな発見を支えています。同時に、COVID-19、エネルギー問題、少子高齢化、国際情勢の不安定化、財政問題など、日常生活や社会の課題解決にも大きな役割を果たしています。スーパーコンピュータによる大規模シミュレーションは、これらの課題解決に向けた重要な技術基盤です。

2011年に文部科学省の諮問会議「HPCI計画推進委員会」のもとに設置された「今後のHPC技術の研究開発のあり方を検討するWG」では、スーパーコンピュータの研究開発の方向性が検討され、その成果として2012年に「計算科学ロードマップ白書」が取りまとめられました。その後、さらなる議論を経て2014年に新たなロードマップが公開され、2017年には改訂版が発表されました。これらの活動は、計算科学コミュニティの育成・発展、若手研究者の発掘、情報交換・成果発表の場の提供、計算資源の確保を目指して行われてきました。

2024年5月31日に発行された「計算科学ロードマップ2023」では、スーパーコンピュータ「富岳」による新たな知見を基に、「計算科学ロードマップ2017」の内容を精査・更新し、新しいシミュレーション手法や分野を積極的に取り入れています。特に、AIや機械学習の急速な発展を考慮し、HPCとデータサイエンスの融合や「科学のためのAI」についても詳細に議論しています。本書では、2027年から2032年頃に計算科学が解決すべき社会的課題や期待される科学的ブレークスルー、そのために必要な計算機システム性能などを取りまとめています。しかしながら、本書が示す大規模計算科学の可能性は、将来のサイエンスに何が必要かを純粋に議論して明らかにするもので、決してフラッグシップシステムだけを意識したものではありません。第二階層・第三階層システムを含む次世代計算基盤のアーキテクチャに関する提言に資する情報を提供し、計算科学が社会にもたらす恩恵を最大限に引き出すことを目指しています。

「計算科学ロードマップ2023」の取りまとめにあたり、計算科学のさまざまな分野から多くの執筆者の方々にご協力いただきましたことに、心より感謝申し上げます。執筆者の皆様の献身的な協力なしには本書の完成は成し得ませんでした。本書が今後の計算科学の発展と社会への貢献を促進するための重要な指針となることを心から願っています。

最新版の計算科学ロードマップは、計算科学フォーラムのWebページで公開されています。

藤堂 眞治
東京大学大学院理学系研究科
HPCIC計算科学フォーラム代表