JA | EN 
一般社団法人 HPCIコンソーシアム
ユーザー視点のインフラ構築を目指して
コンソーシアムの概要 コンソーシアムの概要

理事長挨拶

伊藤 聡

伊藤 聡

一般社団法人HPCIコンソーシアム理事長

先の理事会の第7代理事長に選任された公益財団法人計算科学振興財団の伊藤聡です。これまでの理事長はアカデミア機関から選任されていましたが、今回、初めて産業界のユーザーコミュニティ機関からの選任ということで、身の引き締まる思いですが、よろしくお願いいたします。

一般社団法人HPCIコンソーシアムは、当時、次世代スーパーコンピュータ開発事業と呼ばれた事業に関連して、HPCI準備段階コンソーシアムを経て、2012年に発足しました。爾来12年間、HPCに係る分野横断型の組織として活動をしてきました。その間にフラッグシップシステムは次世代スーパーコンピュータ「京」から「富岳」へグレードアップされ、今期、次のフラッグシップシステムの研究開発が本格化する見通しです。アプリケーションソフトウエアも当初は利用者が自ら持ち込む方式であったものが、利用者の多いアプリはその利用許諾条件を踏まえて、システム側で事前にインストールすることも進んでいますし、とくに産業界から要望の強かった商用アプリの利用環境も整備されつつあります。さらに、これまでそれぞれの目標や方針に従って運用されてきた大学等計算センターはその利用者選定の一部を一括して受付・審査・採択を行うことや、京/富岳でプレインストールされているソフトウエアを各大学のシステムにプレインストールするといった利用環境の提供も進み、準備段階コンソーシアムで検討してきた第2階層まで含めたHPCIシステムとしての計算サービス環境はほぼ実現されました。これもHPCIシステム構成機関はじめ多くの皆様のご尽力の賜物と思います。

一方でこの10年間でHPCを取り巻く環境は大きく変わりました。分野でいえばデータ科学の急速な普及や生成AIの勃興、システムでいえばクラウド環境の浸透や仮想化技術の発展、そして量子コンピュータの登場など、HPCの歴史の転換期であることを感じざるを得ません。こうした中にあって、本コンソーシアムもその役割を変えていく必要があります。これまでの伝統的な計算科学、計算工学に加えて、発展しつつある新たな分野でのコミュニティ形成や新興分野との連携は本コンソーシアムの大きな役割です。本コンソーシアムにはここ数年で参加された会員も多く、そうした新しい会員の皆様とも一緒になって、この課題に取り組んでいきたいと思っています。

産業界との関係はコンソーシアム設立時からの重要な視点です。これはHPCに限ったことではなく、国が整備した研究設備を産業界がどのように活用して、科学技術力のみならず産業競争力を高めていくか、という議論でもあります。昨今、国は産学の研究基盤を整備し、それを共用していくという方針が打ち出されており、HPCIはその先鞭になっていると思いますが、企業の抱える問題はHPCだけを使って解決するとは限らないことが多く、HPCと他の研究基盤との総合的利活用をどう進めるかが課題となっています。産業界コミュニティ機関のご意見を核として、あるべき姿を検討していきたいと思っております。

これまでの本コンソーシアムの10年余の活動を踏まえ、これを新しい環境に即した形により大きく発展させるべく、皆様のご支援とご協力を賜れれば幸いです。

伊藤 聡
公益財団法人 計算科学振興財団
一般社団法人HPCIコンソーシアム理事長