科学技術の発展にとってなくてはならないスーパーコンピュータは、今、世界中で開発が続いています。右の図を見てください。この20年あまり、アメリカとヨーロッパと日本、それに最近では中国も加わって開発が進んでいることがわかります。注目したいのは、縦のメモリが対数になっていることです。一目盛りごとに10倍ですから、この20年間で計算速度がほぼ1000倍にもなっているのです。これを普通のグラフで書いたら、天井を突き抜けてしまうでしょう。それほど劇的に進化しているということなのです。
日本はこれまでスーパーコンピュータの分野において、ブレークスルーとなるマシンを開発し続けてきました。2002年に登場した、「地球シミュレーター」は35テラフロップス(1秒間に35兆回の計算が可能)の演算性能を持ったスーパーコンピュータで、当時の世界の常識を破るものでした。その後アメリカのBlueGene/Lに破られるまで世界最速の座に2年半君臨しました。
スーパーコンピュータ「京」は、2011年に理化学研究所の計算科学研究機構(AICS)(現在の理化学研究所 計算科学研究センター(R-CCS))に設置されました。「京」の演算性能は約10ペタフロップスであり、これは1秒間に1京回(10000兆回)の計算ができるということになります。「京」という名前はそこから来ています。開発競争が特に激しかった時期だったので、「京」が世界最速だったのは1年間に留まりましたが、世界で初めて10 ペタフロップスの壁を破ったコンピュータとして歴史に名を残すことになりました。それに、「京」はただ単に性能上、速いというだけでなく、信頼性や実行効率といった実際の使いやすさに配慮して設計されたことで、多くの科学的成果の創出に貢献しました。
スーパーコンピュータ「富岳」は、2021年に理化学研究所の計算科学研究センター(R-CCS)に設置されました。「富岳」の開発プロジェクトの特徴は、コンピュータの開発者とコンピュータを使う科学者が一緒になって開発を進める「コデザイン」という手法を採用し、使いやすさや実際のアプリケーションでの実行性能をより重視したという点です。その結果、新型コロナウィルスの克服に向けた様々な取り組みにいち早く貢献するなど、「富岳」によって、すでに数多くの成果がもたらされています。
このように、日本はスーパーコンピューティングの歴史の中で何度も重要な貢献をしてきていますし、これからも大きな役割をはたすことでしょう。